ドイツ・ベルリンにて、親の想いが創った学校

Evangelische Schule Berlin Zentrum(初等・中等学校)

       
   兄弟姉妹に点数をつけて比較して、一人ひとりの良いところは伸びますか? 
   評価とは何でしょうか? 

校舎の壁に校名

■ この言葉は、評価のあり方について先生と意見交換の際に出た言葉です。子どもたち一人ひとりが可能性を最大限に伸ばし、たくましく成長し、社会づくりに貢献しながら幸せに人生を送って欲しい・・・それは、私たちが子どもたちに抱いている自然な気持ちです。それを実現する学びの場として、2007年に創設された新しい学校です。

■ 2018年3月、ドイツ・ベルリンの Evangelische Schule Berlin Zentrum を訪れました。
この学校は、保護者や地域、ボラティアが教職員と共に学校を運営するという組織体制の下、独創的なカリキュラムを編成し、 非常に魅力的な授業や、思春期の子どもたちの冒険心をうまく生かした安全教育を実施しており、生徒の個々の特性を踏まえた創造性とたくましい主体性を育成することに取り組んでいました。

中庭の様子

■ 冒頭の言葉からもわかるように、評価に対する考え方一つとっても、あまりにも、本来の学びのあり方からかけ離れてしまっている今の教育。
日本の今の学校は、子どもたちの学びにとって最高の場所を目指しているのでしょうか。学校はどうあるべきなのか、教育の本質を考えさせられる視察でした。

視察の内容

国連アジェンダ2030に基づく教育方針の初等・中等学校にて、地域や親が一緒になって共に好奇心や潜在能力を引き出す教育と、高等教育との接続教育、および社会連携型の特徴的な安全教育プログラムの、現状や教育開発について実践視察と意見交換を行った。

教育方針

目標は、21世紀の子供たちや若者に責任を持って未来を形作る力を与えること、及び、国連アジェンダ2030に基づき、平和で、公正で、社会的かつ環境的に持続可能な世界の構築に取り組むこと。

教育の概要

個人のペースで学びログブックに記録
  • 基本的に学習は、多様な生徒からなるグループ単位で行われる。
  • 誰もが個々のパフォーマンスに応じて学び、誰もが何かでき、誰でも他の人に何かを伝えることができ、誰もが他人から何かを学ぶことができる、多様な生徒による混成グループが共生と学びの自然な形であり、コミュニティを強化するということにつながる
  • ドイツ語、数学、英語、自然と社会・経済の学内で学ぶ基本学習は、個々が独立して学習。ログブックに沿って学ぶ。
担任とやり取りをしながら個々の学びを進める
  • 年齢をまたぐチームや、3つ小規模なチームでクラスが編成される。
  • プロジェクトは、学際的でさまざまな問題に関するトピックと、より長い期間にわたって毎週取り組むトピックがある。生徒は色々な方法を使って学び、自分の優先課題を設定して社会的な文脈の中で学ぶ。特に、社会的貢献やプロジェクトの成果、作品による持続可能な影響を通した学習が中心である。学校外の場所や学外のパートナーとの実践的な仕事から人生を学ぶ。
  • クラスメートとは、プロジェクトで 共に仕事をすることができるが、クラスコミュニティの時間も毎日ある。クラスコミュニティの時間は、今週の 社会学習、宗教、今週の歌(一緒に歌う)、クラス評議会、読書レッスン、そして今週の良いニュースで締めくくられる。 科学と体育のクラスも一緒に行う。ここで、コミュニケーションを取り、発表し、議論する機会が得られ、生徒同士の関係を構築する。
ドイツ言語について学ぶカード
学びたい生徒が選択する
  • ワークショップのクラスには同じ興味関心をもつ学生が参加。音楽芸術、スポーツ、研究、AGENDA21のトピックなどの分野のワークショップが望まれる。学校外の専門家と学生がワークショップを開くこともある。
  • 特別なワークショップも提供され、学習室の特別な資料を通してプロジェクト学習の特別な課題や、大学やビジネスリーダーなどの学外のパートナーとのプロジェクトなどもある。

  • アビトゥアに必要な2つ目の外国語を、自分に合った履修計画を立てて学べる。
  • 7年生から必修の選択科目Ⅰが 週に3、4時間、スペイン語、フランス語、自然科学、演劇、実践的な学習を選択できる。

小説で学ぶ生徒もいる
個々が自分の関心あるトピックの教材で国語を学ぶ
  • 9年生から必修の選択科目II が週に4時間、追加。芸術、音楽、ミュージカル、スペイン語、フランス語、ラテン語、IT、スポーツなど、希望に合わせて開講。外国語(Ⅰ、Ⅱ)のみが同年齢の授業科目。
  • 学校全体の集会は毎週末、歌、褒章、意見発表、心の話、仲裁と共通の祈りなど。メッセージのある人々のプレゼンテーションのスペースもあり。月に1度、クラスがボランティアで準備、運営、司会を担当する集会がある。
  • 昼食も共同体形成の場。学生は3クラス混成の小チームで一緒に食べる。基本的にセルフサービスで、食事が公平に配布されることに責任を負う。クラスメートや教師と、教室外で考えを共有する時間となる。
  • 週1回、PROJECT RELATIONSITY(責任あるプロジェクト)では、学生は自分で決めた仕事をコミュニティで実践する。
インタビューに答えてくれた
10年生のヤコブ君、ケン君、メッシ先生
  • 在学中に3回、8-10学年のすべての生徒がチームを組んで、ベルリン外で3週間の旅に挑戦。社会の厳しさ、温かさ、たくましく生きる術、リスク管理能力などを育てる斬新な取り組み。

★ ドイツ、ユネスコの、世界行動計画の実施に貢献するGLOBAL GOALS CURRICULUMによって優秀学校として認定。

・・・ “グローバル目標のカリキュラムの目的は、持続可能な開発のための教育の革新的な実施と構造的な定着である。本校の開発プロセスと教育は、ESDのための世界行動計画の実際的な実施をどのように拡張できるかを実証している。特に注目に値するのは、学校開発プロセスの参加型アプローチ。トピック関連のワーキンググループはすべて、すべてのネットワークパートナー、生徒、およびその代表者によって組織、運営されている。

教育開発室にて 高等部の先生方が教育プログラム開発について議論中
市民が奏でる音楽が流れる美しいドイツの街並み