研究会概要

♦ はじまり

平 成23年8月発足。平成23年度科学研究費助成事業による、学術研究助成基金助成金(基盤研究(C))、課題番号23501083、研究課題名「認知主 義・状況主義学習理論からアプローチするKOSEN型実技教育の再評価と標準化」の採択を機に発足しました。   本科研費による研究は「デザイン研究」の手法(波多野誼余夫他、学習科学(2004))によって3年計画で進める予定です。すなわち、本研究の成果物であ る「指導支援マニュアルの作成」に向けて、PDCAを回しながらモデル教育プログラムを開発することが前半の研究手法です。その過程で、種々学協会での発 表・議論により最終成果物の質と汎用性を高めます。   本研究では開発したモデルを様々な専門分野、機関の教育関係者間で相互評価することが後半の主な研究手法であり、学び研は相互評価の場として機能させるこ とを目指しています。 さらに、年に数回は、本研究の関係者が一堂に会してのワークショップ、評価会、情報交換会を開催します。  

♦ メンバー

23 名(平成24年10月9日現在) 平成24年10月9日現在、富山高等専門学校(技術職員、教員、産学連携コディネーター、非常勤講師)、熊本高専、豊橋技術科学大学、放送大学、企業退職 後に高校教諭など、上記科研費の研究協力者で構成されています。メンバーは、学び研の趣旨に賛同していただける方を随時募集中です。職業、専門分野、学 生、社会人、県や国を問いません。メーリングリストに登録し活動状況を共有することができます。メンバーの名簿はこちら  

♦ 活動内容

毎週火曜日17時30分~19時30分、富山高専本郷キャンパス物理準備室において研究会を行っています。主言語は日本語です。年に数回、外部講師を招いた研究会を開催しています。研究会の詳細は、お知らせのページをご覧ください。  

♦ 研究会の趣旨

「学生が主体的に学ぶ授業づくり研究会(通称:学び研)」は次のような理念に基づき、立ち上げました。

  ≪社会の変化≫

90 年代以降、産業構造は,大量生産型の産業システムから,付加価値の高い無形資産の創造にも適応したシステムへの変容を求められる時代となりました。さら に,様々な分野で持続可能な社会づくりへの挑戦も始まっています.このような時代,革新的技術開発(イノベーション)や戦略的な知的創造サイクルの推進が 重要となってきており,それらの多くは高専卒業生のような若い技術者に負うところが大きいといえます.

  ≪高専卒業生への期待≫

時代の変化に伴って,高専の社会的使命も変わりつつあります.高専制度が創設された60年代に必要とされた中堅技術者ではなく,企画から顧客対応までの各段階で活躍する多様な技術者を輩出することが求められているのです.

  ≪高専教育がめざすもの≫

平 成15年に定められた独立行政法人国立高等専門学校機構法(高専機構法)には、目的として「創造的な人材の育成」が明記されました。このように高専では社 会の要請に伴い、主体的に課題を見出し解決する資質を備えた実践的な人材を養成するために、新しい教育プログラムや,地域との有機的連携による共同教育を 始めるなど、教育の質の向上を図っています.

  ≪学生が主体的に学ぶ授業づくり研究会≫

「創造性」の基となる「論理的 思考力」、「批判的思考力」、「メタ認知力」、「チームワーク力」「情報収集・活用・発信力」などは、講義型の授業では育成できないとされています。すな わち、行動主義の学習理論に基づいた講義型授業やマニュアル型実験から、認知主義や構成主義、さらには状況主義の学習理論に基づいた新しい授業への転換が 必要です。そして「創造性」を生み出すこれらの能力やスキルは、日々の学びの活動に主体的に取り組んでこそ育ち発揮できるようになると考えます。 このような考えのもと、富山高専教職員有志で、「学生が主体的に学ぶ授業づくり研究会(通称:学び研)」を立ち上げました。 学び研では、専門性や学年進行に応じた具体的な目標,教育手法,評価等を整理して、構成主義や状況主義の学習理論をふまえた「授業デザイン」や「カリキュ ラムデザイン」を研究し、教える授業ではなく、引き出し、気付かせ、できるようになる授業をつくることで、学生が自律的な学習者に育つことを支援していき ます。

  ≪学び研の授業づくり≫

学び研の授業づくりのイメージは、下の図の(2)または(3)です。 図中の青色の縦線は専門知識を表します。黄色の横線は「創造性」の基となる「論理的思考力」、「批判的思考力」、「メタ認知力」、「チームワーク力」「情 報収集・活用・発信力」などを表します。専門知識を縦糸に、技術者に不可欠な様々な能力や知見を横糸に織り込むようなイメージで授業をつくります。

(1)専門知識のみを教える授業(講義など) (2)専門知識をつなぐように能力を育成する授業(ESDなど) (3)能力育成を重視しながら専門知識も教える授業(実験など) (4)専門知識は教えず能力育成だけを行う授業(マナー講座など)

 ※ESD=持続可能な開発のための教育

こ のような授業をつくるために、構成主義の学習法で最も優れているといわれるProblem-based Learningを中心に、Project -based learningやシミュレーション学習、ケーススタディなどの優れた教育手法を組み合わせて、状況主義の学習理論も取り入れながら高専教育として組み立 てます。 併せて,高専教育の特長である16歳からの5年(専攻科を含めると7年)一貫教育や、社会人教育をも視野に入れた、技術者育成のための継続的カリキュラム デザインについても研究の対象とします。  

更新日:2012.3.31