② 危険実験の演示

4-3.訓練や知識不足など,未熟さに対処するための取り組み

4-3-2 構成主義的教育プログラム

① イラストを使った簡単な危険予知トレーニング

 

実験前に使用する薬品や機材等の取り扱いについて,口頭で説明していた従来の方法(行動主義的)に加えて,簡単な演示実験を組み合わせて行うことが効果的であった.危険実験のネタはどれだけでもあるが,演示する場合には必ずあらゆるリスクをコントロールして絶対に失敗しないように,薬品の量や温度などの条件を精査した上で予備実験やリハーサルを十分に行ってから学生の前で演示を行うことが肝要である.

例えば,濃硫酸や水酸化ナトリウムは使用頻度の多い一般試薬であり,その危険性は知識としては,学生は皆,知っている.しかしながら,使用時に保護メガネを忘れたり,白衣の腕まくりをしたりしたままで取り扱うことが多い.そこで,危険性を口頭で説明する際に,濃硫酸で有機物が炭化する様子(図4-26(A))を見せたり,水酸化ナトリウム等の種々の溶液にタンパク質として実際の肉を入れて変化する様子(B)を演示して見せたりした.

また,高温にした水蒸気で満たしたアルミ製の一斗缶を密封して急冷すると大きな音と共に一斗缶がつぶれる様子が観察できる.このようにあらかじめリスクをコントロールして行う危険実験を見ることにより知識がリアリティを伴って記憶され,試薬の扱い方や保護具の必要性について,知識が定着し活用(行動化)できるようになることをねらった.

揮発性のある引火性の試薬を使い,どのような種類の液体がどのように引火しどのくらいのスピードでアクリル筒内を走るのかを見せる実験(C)なども効果的だった.

また,ヒュームフードと発煙機を使って,実際に気流を視覚化して見せる(D)ことにより,正しいヒュームフードの使い方を身につけることも行った.

以上のように,その薬品や機材を使う直前の説明の際に,対応する危険実験を行うことが効果的であった.