マイ・プロフィール

伊藤通子(ITO Michiko) 博士(学術)

東京都市大学 教授
       教育開発機構 副機構長・副学長補佐
       FD推進センター センター長
       大学院総合理工学研究科 電気・化学専攻  

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♦ 受 賞
1993年日本青年会議所 国際部門 とやまTOYP大賞
1994年(財)とやま国際センターより感謝状
1998年日本化学会第74春季年会,ポスター賞
1999年富山県草の根国際交流賞
2002年平成14年度 「高専教育」教育研究分野 文部科学大臣賞
2004年第22回 大学等環境安全協議会 技術賞
2008年第17回 日本工学教育協会賞
2011年平成23年度 国立高等専門学校機構職員表彰 技術職員部門
独立行政法人国立高等専門学校機構理事長賞
「高専教育の高度化に伴う教育支援業務改革への貢献」
2013年平成25年度 全国高専教育フォーラム・教育研究活動発表
優秀発表賞
「デンマークにおけるPBL教育の成立過程と、高専教育への導入」



学び方に関心をもち,現在の仕事につながっている経緯

更新日:2023.4.3

 筆者は,1980年代,当時の社会教育団体によって日本に紹介された米国のグローバル教育や欧州の開発教育等の参加型学習法に衝撃を受け,以来30年以上,NPOや高等教育の現場でその導入と実践に携わってきました。
 高専の色々な専門科目(一般教養から工学の専門)や学年(16~22歳)の授業において,数々の参加型・実践型授業を作り上げ指導にあたってきました。また、新しい時代を見据えた教育支援に対応できる技術職員組織の設立準備と運営に関わり,学科横断型の一斉授業などでも教員組織とのティームティーチングで教育プログラムデザインを行いました。

 一方,修士(学術)取得の過程で,長年の経験知を理論的に裏付けることが可能になり,実践経験から普遍性を導き出すことができるようになりました。同時に,欧米のような参加型学習が日本の教育界でなかなか発展しないことに問題意識をもち,研究者/実践者としてその解決の一端を担いたいと考えるようになってきました。つまり,60年代の伝統的高等教育への学生抗議運動と新教育に対する社会的ニーズは,欧米諸国では教育や学校改革のきっかけとなり,デューイらの理論から生まれキルパトリックらにより実用化されたプロジェクト型学習など,数々の新しい学習法が生まれ各国文化と融合しながら発展したのですが,なぜ日本には根付いていかないのかという点です。

 例えば,デンマークは,多様性の共生と持続的社会形成に挑戦しつつ経済発展を遂げ欧州諸国にも一目置かれる存在ですが,その根幹に小学校から大学までを貫く学習者主体の教育がある。米国やロシアで生まれた理論や教育手法を単に導入したのではなく国民性や伝統的思想との融合の努力の上に新しい教育をつくり,Active & Tough & Innovative な人材を輩出して国づくりの礎としています。ここには日本の大学の教育改善へのヒントが隠れていると考えます。

 現在は,Problem-Based Learning 及びEducation for Sustainable Development を中心に据え,これまでの国内外の活動で得た高等教育や社会教育の研究資源・人的ネットワークを活かし調査研究をさらに深めようとしています。具体的には,学生への働きかけ,教員への働きかけ,環境やシステムへの働きかけの3方向からの取り組みや,学生FD,初年次導入教育として全学的に展開できる教養教育プログラムの開発,個々の教員のキャラクターや専門性が活きるユニークな授業づくりへの支援,ラーニングコモンズを含めたソフト・ハード両面の教育・学習環境整備や仕組みづくりなどに対して,教職員,地域の人々との対話や合意形成の場をつくり,アイディアを生み出し盛り込むことに関心があります。

 現職では,このような思いの下,これまでの経験をベースに東京都市大学の教育改革に携わっています。
 都市大の教育理念を実現するために、都市大の教育の特長と課題から生まれた新設科目「SD PBL( Project organaized Problem-Based Learning for Sustainable Development)」のカリキュラムデザインとクラスデザインを2017年から行いました.学内での共有(仕組みづくりやFD等)を経て、2020年度からは1年生が受講するSD PBL(1)を全学部で開講、翌年より順次、2年生のSD PBL(2)、3年生のSD PBL(3)の開講し、2023年度は新入生のPBL科目への導入を目的とした「ウォーミングアップセミナー」を設計・実施しました。

 そのような教育改革に伴い、FD(Faculty Development)や、大学の教育方針に基づいた評価の枠組み作り(ルーブリックの作成や各科目評価への落とし込み)、教育開発機構のニュースレターの作成にも取り組んでいます.

現在の研究テーマ・関心

更新日:2019.3.31

  • Problem/Project-Based Learningを始めとする構成主義・状況主義の教え方、学び方、クラスデザインとカリキュラムデザイン,評価のしくみ
  • Sustainable Development 志向のPBL プログラム
  • 社会実装教育のデザイン(デザイン思考、システム思考、アントレプレーナーシップ+知財教育,環境安全教育,キャリア教育,持続可能な開発のための教育(ESD))
  • 持続可能な社会づくりには,“多様な人々の学び合いの場づくり”および,“行動する人づくり”が重要だという思いを礎に,職場,地域,NPOなどでのESD活動
  • 里山に移り住んで20数年。豊かな自然と生活の知恵が残っていることに感動しつつも、高齢化、過疎化と共に誇りや知恵が失われていく現状に心が痛む。ESDをキーワードに棲み続ける生活の場づくりとして、「学び」からのアプローチで何かができないかと、生を終えるまで試行錯誤。



田舎暮らしや技術職員時代の“地べたの経験” が教育活動のベースに。

更新日:2023.4.3

 この研究活動は技術職員だった頃から行っていますが、研究職でもないのに・・・と、不思議に思う方がいらっしゃるかもしれません。
 【 ご興味のある方は => 地域社会ライフプラン協会 情報誌 ALPS_vol.144. 第4回 私のキャリアデザイン(筆者寄稿文)】

 私の在職時、高専の技術職員、特に富山高専の技術職員は、どちらかというと研究支援よりも教育支援に軸足を置いていました。高等教育機関であるにも関わらず中学校を卒業したばかりの学生に教えなければならないことや、実験・実習の授業が多いことから、教育への工夫が必然なのです。

 また、技術職員は複数学科や学年をまたいで多様な学生たちに触れる機会が多いことも、教育に目が向きやすい理由です。   そのような立場から、高専教育という7年間(5年+専攻科2年)の一貫教育で、学生がいつ、どうやって、どのような能力を獲得していくのか、客観的・俯瞰的視座をもって観察できました。
 専門の学問分野に立つ教員とは異なる、実技の指導経験に依拠する教育学的視点をもって、新しい実体験型教育プログラムを開発、実施することが可能だったのです。

 これまで学生の発達段階に応じて種々の教育手法を使った学生実験や、ワークショップ型演習(認知・状況主義の教育)を行ってきました。
 そうして、認知・状況主義の教育は、伝統的教育手法であるテキスト実験(行動主義)と適切に組み合わせることによって教育効果が大きくなること、指導スキルが教育効果に大きく影響すること、などに気付き始めたことが、このHPを作成するきっかけになっています。

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 もう一つの私の柱は、2000年頃に移住した限界集落での田舎暮らしです。しばしば、問題解決に「自分」を含めない外からの評論家的な取り組みをみることがあります。その地で生きていくことを前提としない人の 他人事の構想、つまり、理想形で語られる「未来の姿」ほど無責任なものはありません。

 例えば・・・
 野生動物との共生はよく取り上げられているテーマですが、熊は本当に本当に怖いのです。温和と言われる本州の熊でさえも怖いです。家の柿の木やクリの木にはクマの爪痕がいくつもあります。共存って言われても・・・と言うのが、実はクマと共存せざるを得ない私たち、家の前にクマが来る、クマに柿を取られる田舎の人間の本音です。
 具体的には、夜にコンビニに行くために外に出るというような生活と決別するということです。田舎の昔からの知恵でもあった犬を放し飼いにする,ということを禁ずる都会型のルールや,大声で走り回る子どもたちがいなくなったというような,時代の流れとも闘わないといけないということです。闘うことは問題解決のための知恵を創出するということです。そういう事情を深掘りすることなく、野生動物との共存を子どもたちに、牧歌的・抒情的に語らせることに違和感を感じます。

 ★その地に足をつけ,その地で生きていくための学習
 ★雇用を生み出す教育
 ★小学校から大学、成人教育までがシームレスにつながる内容と評価のしくみ
 ★どのような場で受けた教育にも、世界に向けて質の保証が示せる制度的枠組み

そのような視点を大切に、次の時代をつくる教育を考え続けたいと思っています.