高専5年生(大学2年生レベル)高分子化学Ⅱ

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♦ この授業のキーワード

  • 予習型 / 自学自習 / 発表 / 質疑応答 / 議論 / チームによる共同学習 / 教員による補足

♦ 教授・学習のスタイル

高分子化学Ⅱの教授・学習スタイル

高分子化学Ⅱの教授・学習スタイル

本授業(5年生高分子化学Ⅱ)は、学問体系に沿って専門的知識を習得することを目指しながら、授業の進度や内容の深まりは学生の学びのペースに合わせるタイプの授業です。

まず、学ぶべきテーマやキーワードを教員が提示します。学生はチームを組み、提示されたテーマの中から自分たちが取り組むテーマを選びます。そのテーマに関して調べ調査結果をレジュメとしてまとめ教員に提出します。教員は、学生チームが提出したレジュメの中から1つのテーマに対して2チームのレジュメを選び、他の学生の前でプレゼンテーションする機会を与えます。

ひとつのテーマに対して2チームそれぞれが、プレゼン15分、質疑応答や議論を30分行います。答えられなかった質疑は再調査して翌週もう一度プレゼンの機会が与えられます。

テーマの提示 ⇒ 調査 ⇒ プレゼン ⇒ 質疑応答と議論 ⇒ 再調査 ⇒ 質疑応答と議論・・・の順に授業は進みます。教室全員で行う「ゼミナール形式」の授業スタイルです。
 

♦ 授業づくりの概要

    • この授業づくりは、まず、担当教員が学生にどんな力をつけてほしい と思っているかということからスタートしました。授業の「ねらい」や「達成目標」という言葉で表されますが、授業をする前とした後で、学生がどんなふうに成長してほしいと思っているのか、何ができるようになってほしいか、どんな成果物を生み出せるようになってほしいか、記述にどんな文言が表れるようになってほしいかなど、具体的にイメージしておくことが大切です。
      チームによるProject型で進めるため、シラバスにはコミュニケーション力やチームワーク力なども挙がっていますが、特に、主体的な学びに必要なスキル(主に情報の収集力・活用力・発信力)を身につけることに重点を置きました。

 

    • 授業でつけてほしい力にはほとんどの場合、習得してほしい知識 が含まれています。しかし、学生が学びに対して主体的になると教員が期待する以上の知識がどんどん吸収されますし、さらに新しい知識を求めます。また、新しい知識のみならず、その時までにもっていた知識をうまく使わないと前に進めなくなることも多いはずです。この授業では、学生にもってほしい知識の範囲を教員が決めるのではなく、学生個々が興味関心に応じて後からどんどん広げられるように、最低限理解してほしいコア概念と、一生(おおげさですが…)覚えておいてほしいインデックスのような専門用語を明らかにしてから授業づくりを始めました。
      具体的には、担当教員は高分子化合物の物性が概念的に理解できることに重点を置きました。高専教育の最終年ということもあり、4年生までに習った知識を応用して、高分子の様々な物理的・化学的挙動が説明できることをねらいました。

 

  • つけてほしい力と習得してほしい知識に関してねらいを定めたら、次は、どのような教育手法が向いているか、学生の学びを促進するためにどのような方法で働きかけるのが適しているのかを考えました。
    テーマに基づいて、学生が調べ、パワーポイントでプレゼンし、皆で討議するゼミナール形式で授業を進めること、また、参加度を上げるために、クリッカーを使って即時に相互評価を行うこととしました。さらに、通常の講義型を採用しない理由を学生に理解してもらい納得して授業に臨んでもらうために、最初の導入と、最後の振り返りのワークを丁寧に行うことにしました。

 

♦ 授業の概要

(1)科目名  高分子化学Ⅱ(選択科目)シラバス
(2)受講学生 5年生物質工学科21名受講
(3)担当者  教員1名、技術職員1名
(4)時間数  90分/週

 

♦ 担当教員のねらいⅠ(どんな力をつけてほしいか:シラバス)

(1)受け身ではなく、能動的に授業に参加する。
(2)主体的に学ぶ重要性と楽しさを知り、卒業後にも学び続けるためのコツをつかむ。
(3)主体的な学びに必要なスキル(主に情報の収集力・活用力・発信力)を身につける。

※ 「ねらい」は欲張らない方がよい。チームによるProject型で進めるため、チーム内でのコミュニケーション力やチームワークなども「ねらい」に加えたくなるが、この授業では、上記の4つに絞って授業を進めた。

 

♦ 担当教員のねらいⅡ(習得してほしい知識:シラバス)

(1)高分子化合物の物性を概念的に理解すること。
(2)4年生までに習った知識を使い、高分子の物性に関する物理的・化学的挙動が説明できること。
(3)講義と同程度の専門的知識を習得すること。

♦ 主体的に学ぶことを支援するために使用した機材や学習ツール

(1)Turning point
(クリッカー:手元のボタンを押すことによって個々の意見を即時に集計し視覚化できる機材)
(2)PCとプロジェクター
(3)ホワイトボード

♦ 主体的に学ぶことを支援するために利用した手法

(1)Project-Based Learning の学習理論と手法 ≪解説へ≫
(2)ブレーンストーミング、マッピング ≪解説へ≫
(3)プレゼンテーション(発表と質問) ≪解説へ≫
(4)クリティカル・フレンズ(批判的な友達) ≪解説へ≫

♦ 授業の進め方

事前にTurning point用 出欠者の名簿を作成する。
各週のプレゼン後に行うTurning pointによる相互評価用アンケートファイルの作成。
第1週(Turning pointとクリッカーの準備・資料配布)
◎導入のグループワーク
[テーマ] 小、中、高専を振り返って、自分自身が学んだ!と思えたときはどんなときでしたか。
[ワーク] ブレーンストーミング(創造性技法の発散法)     15分程度
グルーピング(創造性技法の収束法、可視化)     10分程度
マッピング(創造性技法の収束法、合意、可視化)   15分程度
ギャラリーウォーク                 10分程度
[準備品] 模造紙 マジック 付箋 PC等
◎チーム決め   1チーム 4~5人 (5チーム結成)
◎発表テーマ決め 1チームは、3テーマについて調査・プレゼンする。
第2週(Turning pointとクリッカーの準備・配布)
◎学生のワークの結果から、これまでに学生自らが学んだと実感した時を表すkeywordを抽出し、担当教員から「受身の授業より主体的に学んだ時の方が、より“学び”が大きかったという経験を思い出してほしい」というメッセージを伝えた。
第3週 (担当教職員は、学生に問いかけてまわる)
◎図書館で調査 ⇒ 以降は特に時間を設けず自主学習
第4~11週目(問いかけ、クリッカーの準備、PC操作など)
◎基礎的内容の調査結果をプレゼン 10分
◎質疑応答      30分
◎視聴側の学生の理解度を、クリッカーによりアンケート  5分
◎質疑に対する回答を再調査してプレゼン、質疑応答、アンケート
第12週
◎記述式試験
第13週・第14週(Turning pointの準備、クリッカーの準備・PC操作など)
◎応用的内容の調査結果のプレゼン
◎質疑応答
◎視聴側の学生の理解度を、クリッカーによりアンケート。
第15週 (グループワーク準備、ファシリテートなど)
◎試験の解答を解説
◎グループワーク
[テーマ] この授業で学んだこと(40分程度、方法は第1週と同じ)
◎振り返り用紙記入
[テーマ] この授業を通して  ⇒(宿題 A4用紙に記述し、提出。)
・すぐにやってみようと思うこと
・一年以内にやってみようと思うこと
・ずっとやり続けようと思うこと
・満足度
・後輩へのメッセージ

 

♦ 評価や振り返りの方法(学生に配付した評価基準表)

(1)学びのペースメイクをするための評価方法
…スケジュール表と進度のチェック
(2)内容を理解しているか評価する方法
…クリッカー、調査報告レジュメ、試験
(3)ねらいが達成されたかどうか評価する方法
…評価基準表の中の項目、ワークショップの成果物、振り返り用紙
(3)この授業の内容、方法などが適切かどうか評価する方法
…プレゼンテーション、グループワークの成果
(4)授業の改善に活かすための評価方法…学生参加型FD
…学生を交えた授業の在り方についての座談会
(参加者:担当教員・技術職員、過年度学生、教育コーディネーター、その他教員と技術職員など)

♦ 授業を進めるにあたってのコツ、アクティブラーニングのためのテクニック

(1)方法やルールはしっかり伝えて、後は学生の潜在力を信じる。
(2)教員はファシリテーターの役割に徹する。
(3)一人ひとりの認知活動に対して適切なフォローを行う。