5-3-1 ギャラリーウォーク
効果
(1)時間があまり取れない場合や、中間的な発表会に適している。
(2)クラスの全チームの学習活動の様子が概観できる。
(3)様々な視点からのフィードバックが得られる。
(4)動機づけに効果的で、メタ認知力、評価力を育成できる。
成果物を展示して、教室内にギャラリーのような空間を作り、自由に歩いてまわりながら、各チームの成果物を見たり、議論したり、評価したりする発表の形式である。
学習活動の手順
(1)作業した机の上に成果物を展示する。(時間的、空間的余裕がある場合は、壁に貼り出すなど展示の工夫をすると良い。)
(2)チーム内で説明係を2名選出し、先に説明する担当と、後で説明する担当を決める。
(3)説明係以外は、付箋紙とサインペンを持って、号令とともに他の班の成果物を見に出かけていく。
※付箋紙の替わりに点数がついたシールなどを使って投票を行うこともできる。
(4)ギャラリーを歩いてまわるように、クラス全体のチームの成果物を見て説明係の説明を聞く。
(5)成果物に対する感想やコメント、評価などを付箋紙に書いて成果物の上または所定の場所に貼っていく。
(6)半分くらいを経過したところで、説明係の交代を告げる。
(7)ギャラリー・ウォークを続ける。
(8)号令とともに終了し自分のチームに戻る。
(9)集まっている付箋紙のコメントや、説明係が受けた質問などについて、チーム内で話し合う。
この方法には様々な変形型が考えられる。例えば、チーム内の役割分担(偵察係、記録係など)を増やし明確にして、見に行く班や順序などもあらかじめ決めておき、各々が責任を果たさなければならないようにすることもできる。また、自由にバラバラに歩き回るのではなく、グループごとに固まって決められた時間で移動し、その場で議論をしてその結果をコメントとして残していく方法もある。
いずれにしても、混乱しないようにルールや手順を明確に学生に伝え、この活動の成果が得られるようにしなければならない。
5-3-2 発表と様々なワークシートを使用した相互評価
効果
(1)発表の聴衆側にとっては、種々のワークシートを使用することで、他のチームの発表をただ聞くのではなく、考えながら聞く訓練になる。
(2)発表者側にとっては、発表後にフィードバックが得られる。
(3)相互に順位付けをする場合、その根拠が明確になり投票の透明化をはかることができる。
(4)評価基準の明確化、評価のしやすさを考慮し、①の評価シートを、②-1〜②-3のルーブリック式評価用紙に改訂。
ルーブリックは、学生と一緒に作成するのが望ましい。学生にとって、目標が具体化され、努力の方向性がはっきりする。
図5-15 評価基準の明確化・評価し安さを改善し評価用紙をルーブリックに改訂した例
5-3-3 発表会の質疑応答のためのツール
A.発表者の主体性を重視する質問の仕方「Critical Friend(大切な友だち)」
効果
(1)発表者の主体性を大切にする雰囲気をつくることができる。
(2)問いかけによる、ピア足場かけが機能する。
(3)クラス全体が、創造的な学びの共同体となる。
学習活動の手順
Pさん:自分の企画や成果を説明する人
Oさん:Pさんの説明を聞く人(複数可)
(1)まず初めに、Pさんが、Oさんに対して自分の企画(考え・思い・成果)を説明する。
(2)不明確な点を明確にする。
Oさんは、Pさんの企画について、わからなかったところを質問し、理解を明確にする。内容について変更・修正を求めたり、自分の考えを表明したりはしない。Pさんは、Oさんに内容が正しく伝わるように説明する。
(3)よかった点を指摘する。
Oさんは、Pさんの企画の中で良いと思った点を指摘する(ほめる、認める、共感する)。
(4)まずい(と思った)点を、質問の形で投げかける。
まずい(と思った)点については、Pさんがすでに検討済みのこともあるので、それをOpen Question(開いた質問)の形で投げかける。Pさんに新しい視点を提供するという気持ちで問いかける。あくまでも主役はPさんである。
(例)・・の場合はどうしようと考えていますか。 (新たな場面が想定される場合)
(例)他にどのような方法を検討しましたか。
(例)・・についてもう少し具体的に聞かせてください。
(例)それを実施するに当たって最も困難だと思うことは何ですか。
(例)どのような状態になることが成功だと考えていますか。
質疑応答の中で、Oさんの代案がPさんに示されることもあり得るが、その場合もあくまでも主役はPさんという気持ちが大切。
(5)Pさんは、必要に応じて自分の計画を修正する。
(6)OさんがPさんに、愛情(友情)を込めてラブ・レターを書く。
実践する(実現しようとする)のはPさん。Oさんは、Pさんの実践やその結果がよりよくなるように、励ましたり自分のできる支援を書き記したり、ときにはPさんへの忠告を含めたりして、「愛情・友情」のある手紙を書き、Pさんに渡す。
(7)Pさんは、Oさんからのラブ・レターを励みに計画を実行する。
留意点
一連の活動の中で、(4)が大変むずかしい。私たちは、まずい点を指摘する時に、「~すればいいのではないですか。」とか「~はおかしいので直した方が良いと思います。」というような言い方をしてしまうことが多い。これはYesまたはNoで答えることができるClosed Question(閉じた質問)である。閉じた質問では、質問を受けた人の創造力ややる気を促すことはできない。学生がなかなかできない時には指導者がストップをかけて、どのように問いかけると、やる気が出たり新しいアイディアが浮かんだりするのか、また自分の考えが尊重されているように感じるかなど、クラス全員で「Open Question(開いた質問)」について考える機会をもつといい。場合によっては、指導者がモデルを務めることも必要である。