4.KOSEN型実技教育モデル授業

図4-1 これまでに著者らが組み立てた授業

図4-1 これまでに著者らが組み立てた授業

著者が技術職員としてこれまでに支援した授業の中で、アクティブ・ラーニングとして担当教員と共にデザインした授業を、図4-1に示す。それぞれの授業で、担当教員の授業に対する思いを軸にして、専門性、学生の発達度、教員のキャラクター、他の授業との関連などを考慮して、学習活動に適した手法を選択し、教材やワークシートを作り、教育プログラムとして組み立てた。何よりも大切にしたのは、担当教員との綿密な打ち合わせである。特に、学生の学びの状況分析や、その授業で重点的に獲得してほしい能力(知識、スキル、姿勢)の絞り込みには、可能な限り多様な視点からの検討が重要である。加えてアクティブ・ラーニングでは学生の理解度や活性度に応じた学習活動の柔軟な変更がよくあるため、教員との意思疎通が不可欠である。

質の高いPBLを実施しているシンガポールやマレーシア、デンマーク、フィンランドなどの工学系の高等教育機関では、学術的専門指導を担う研究者と、教育学の専門的見地からカリキュラムや学習活動の組み立て、スタッフの研修などを担う研究者が両輪のごとく協力し合う体制があり、その大学の特色を活かした教育を作る仕組みを有している。オルボー大学のコルモス教授は、Department (学科)に所属するAcademic Staff(工学が専門の研究者)と、School & Study board(教育委員会)に属するEducation Staff(工学教育が専門の研究者)が時には兼務しながら同時並行で大学の教育を企画、運営していると語っている。このような部署がないことが、日本の工学教育で質の高いPBLが定着していないといわれる要因の一つだと考える。現段階では、多元的な視点を確保し、講義よりも大きい負担を減らすため、複数の教員、または技術職員やコーディネーターらとチームを組んでアクティブ・ラーニング型の授業づくりを行うことを提案したい。

4章では、いくつかの特徴的な授業づくりについて、モデル授業として紹介する。

4-1 本科のためのPBL基礎力の育成のためのモデル授業

4-1-1 1年生のための調べ学習を中心とした合意形成と情報マネジメントの訓練

4-1-2 2-3年生のための、探求型実験によるチームで協働してプロジェクトを推進する訓練

4-1-3 5年生のための、現実的な問題解決に専門知識を応用して最後まで考え抜く訓練

4-2 座学の講義を、学生が主体のアクティブ・ラーニングに

4-2-1 専門科目で、主体的に学ぶことを学ぶ授業

4-2-2 技術士補のレベルを維持しながら、JABEE認定条件のチームワーク力を育成する授業

4-3 PBLによる技術の社会実装(社会に役立つものづくり)