4-3 PBLによる技術の社会実装(社会に役立つものづくり)

4-3 PBLによる技術の社会実装(社会に役立つものづくり)

 3章-5 主体的な学習に不可欠な基礎スキルの訓練、3章-6 教育評価の意義と方法、3章-7 学習活動の組み立て において事例として挙げた授業である。

◆授業の概要

 科目名  専攻科特別演習・実験(必修科目)

 受講学生 専攻科 1年生 約20~30名受講

 担当者  教員:1~2名、技術職員:4名
     (研究協力者:定村誠、高松さおり、小澤妙子)

 時間数  前期:90分×2/週×15回、後期:90分×3/週×15回

◆教授・学習のスタイル

図4-13 授業のスタイル

図4-13 授業のスタイル

◆授業の進め方

表4-6 専攻科特別演習・実験 平成24年度の授業の進め方

授業内容
学生の活動

●授業のガイダンス
・ この授業でつけてほしい力
・ 授業の進め方、学び方、PBLとは、シラバスと評価基準資料 
・ 授業の概要(一年間の流れ/評価方法/学びのシナリオデザイン/PBLによる学びのイメージ/メタ認知力/プロジェクトの成功とは/社会人基礎力)
●PBL準備(プロジェクトのための基礎スキル訓練)★プロジェクト・ポートフォリオ ver.1 用紙

・ 自己分析と30秒自己紹介
・ チーム結成
・ コミュニケーション・スタイル分析/自己分析/30秒をきっちり使う自己紹介・チーム結成
・創造性技法の演習 「プロジェクトが成功するために大切なこと」/発散技法、収束技法について/プレゼンテーションについて・創造性技法(ブレーンストーミングとマッピング)の演習

●事業所の決定
●チームビルディング(チームワークのための準備)
・ LEGOを使ったチームビルディングのワーク
・ KJ方を使ったチームビルディングのワーク
・ 絵を使ったチームビルディングのワーク
●チーム内の役割分担
●事業所訪問の準備
・ ルール作り、名刺作り、連絡網作り
●事業所訪問の際のインタビュー計画、マナー

本プロジェクトでチームに必要な役割(全員が役割をもつ)
・ 事務・会計・伝票のリーダー
・ 記録のリーダー(活動内容をまとめ、記録するなど)
・表現のリーダー(チームの活動や成果を効果的に伝える)
・ 交渉のリーダー(渉外、外部との連絡など)
・ ムードメーク・タイムキープのリーダー(スケジュール管理、ムードメーカー=活動を円滑にするための提案、雰囲気作り)
・ 合意形成のリーダー(ファシリテーター=メンバーのアイディアを引き出す人、活気づける人,方向を示す人)

●第1回事業所訪問
●帰校後、訪問の結果をまとめ、問題抽出の準備のワーク

≪24年度、お世話になった事業所≫
富山県呉羽青少年自然の家/富山市天文台/富山型(共生)デイサービスなごなるの家/デイサービスセンター おらとこ/富山市動物園ファミリーパーク

≪発表会への来場者≫ 
NPO法人おらとこ/協伸熱処理工業株式会社/日立国際電気/富山市天文台/富山県呉羽青少年自然の家/立山マシン/田中精密工業/石崎産業/公益財団法人富山市ファミリーパーク公社/エーティーワークス /NPO法人なごなるの家/日産エンジニアリング/宮田特許事務所/朝日印刷/協同アルミ/コーセル/北日本放送の方々より、毎回、貴重なアドバイスやご講評をいただいた。

図4-14 現地施設から最終発表会までの活動の様子

図4-14 現地施設から最終発表会までの活動の様子

プロジェクト・ポートフォリオの書き方指導
●課題の抽出と明確化
●PCMについて説明/猿田さん?それとも人田さん?/PCM手法と、富山高専のPBL教育/ブレーンストーミングについて/コラボレーションとは/「問題」「問題解決」とは/人はどうやって問題を解決するのか/チームが成功するために必要な「力」「能力」/話し合いのガイドライン・PCMのワーク
●第1回 中間発表会(5/28)の準備

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●グループワーク、班によっては事業所訪問
・ 課題の抽出と明確化
・ プロジェクト・ポートフォリオの書き方指導
●発表会に関する注意事項

●班によっては事業所訪問/課題の抽出と明確化
●中間発表会の準備

第1回 中間発表会・評価会(アイディアの発表と議論)
★自己目標用紙

●中間発表会の振り返りと、製作品の具体的アイディア作り



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●指導者チームによる進捗状況のヒアリング
(A班~E班 各班1時間)
・ グループワーク、班によっては事業所訪問
・ 課題の抽出と明確化
作業予定表の作成/模型や試作品の製作

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●ホワイトボード・ミーティングの手法と効果
●物品購入手続き方法の説明
●作業予定表の作成/模型や試作品の製作/指導チームとのディスカッション/事業所訪問
★プロジェクト・ポートフォリオ用紙Ver.2

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●知的財産の保護と活用に関する検索指導講習
講師:特許事務所 弁理士の先生
・ものづくりにおける先行技術調査の重要性
・特許電子図書館(IPDL)による検索手法の実習

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●指導者チームによる進捗状況のヒアリング
●第2回中間発表会に向けた作業
●夏季休暇中の作業計画を立てる/第2回中間発表会の準備

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●第2回中間発表会の準備

平成24年度の学生による製品
【A】福祉施設用暖房機能付きテーブルの開発
【B】竹を利用したものづくり体験プログラムの提案
【C】体験型 天文学学習用遊具の開発 
【D】高齢者向けテーブルゲームの開発
【E】子供連れの家族に役立つ動物観察用イスの開発

図4-15 Cチームの最終プレゼン発表資料より抜粋

図4-15 Cチームの最終プレゼン発表資料より抜粋

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●卒業生による
●講演会第2回中間発表会・評価会(模型の展示による発表と議論)
★提出物:企画書 ・作業予定表 ・自己評価用紙 など

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●指導者チームによるヒアリング
・夏季休暇中の活動報告と進捗状況について
・製作・改良

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●製作・改良
●指導チームとのディスカッション
●事業所訪問、ディスカッション
★★提出物:作業計画表(ガントチャート、設計図、プロジェクト・ポートフォリオ)

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●製作・改良
●指導チームとのディスカッション
●事業所訪問ーディスカッション
●第3回中間発表会の準備
★提出物 プロジェクト・ポートフォリオ
★提出物 発表要旨/作業計画表 (設計図)
★発表用ポスター仕上げ

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●第3回中間発表会
★開始前に提出 プロジェクト・ポートフォリオ
★修了後に提出:第3回自己評価用紙/各班ポスター等、発表資料の電子データ

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●製品の改良・制作・事業所や授業スタッフとのディスカッション
★提出物:プロジェクト・ポートフォリオ

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●最終成果発表会

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●総合評価のためのヒアリング 30分/班
●納品までの改良

3月

各事業所で使用していただくため搬入

 

◆この授業のキーワード

 PBL/社会実装/チームによる新しい知の創出/協働学習/合意形成/CO-OP/社会人基礎力

◆授業づくりの概要

 専攻が異なる学生でチームを組み、地域の事業所において問題の抽出から、社会実装までを学生主体で進めるPBLの授業である。

 地域の事業所のミッションに貢献することをめざして、自分たちのものづくりによって解決できる課題を抽出し課題解決に向けて取り組む。卒業研究や共同研究のような問題中心型の学術的・技術的解決の体験ではなく、事業所の社会貢献事業に寄与するための、提案型ものづくりによる学生中心の学びの体験を目的とすることが特徴である。

 そのため、学習活動では、技術開発に関わる多様なステークホルダーや異分野の専門家との協働による新しい知の創出という一連のプロセスを経験することを重視している。また、単なる体験に終わらせないように、認知の状態を常にアセスメントして様々な気づきを促しメタ認知力を育成するため、ビジネス界でも利用されているような多種多様な手法やワークシートを用いた。

 発表会は学生へのフィードバックと動機づけを目的として4回行い、お世話になっている事業所の方々に加え、技術開発を担う企業技術者や特許事務所の弁理士の方々などを招き議論する機会をつくった。3月には、開発した製品を使用していただくために事業所に搬入した。(5-2-1-B-2、5-2-3-E、5-3-2、5-4、5-5参照)

◆学生の感想

A.福祉など、実際の社会問題に携わる人と交流しながらものづくりをすることは、学生時代しかできない体験だと思う。せっかくの機会なので、失敗してもいいから(僕たちはあまり良いものを作れませんでした・・・)一生懸命取り組めばそのプロセスを、自分の成長に役立てられると思います。

B.責任感ということが重要だと感じました。専門や性別や経験にこだわらず、自分にできることを見つけ出して挑戦していく姿勢が大事だと思います。それが、チームの中で自分の責任を果たすことにつながっていきます。

C.これだけしっかりとしたPBLを1年間かけて受講することができることはラッキーだと思います。主体的に学ぶという今までにない経験ができました。チームの中でそれぞれの個性を活かしながら、創造的な作業をするのは本当に大変でした。しかし、意見をまとめていく大切さや、1人ではできないことでもチームの力で大きなことができるということがわかり、製品を使ってみて施設の方が喜んでくれた時には、達成感や充実感を感じました。