4-3.訓練や知識不足など,未熟さに対処するための取り組み
4-3-2 構成主義的教育プログラム
③ 動画やDVD等の視聴と演習問題や意見交換
DVD 等の動画教材は一般的に,学生実験全般にわたるガイダンス的要素を含んでいるため実験を初めて行う段階に効果があると考え導入した.教材として,「山口和也,山本仁 著:基礎化学実験 安全オリエンテーション,東京化学同人(2007)」を使用し,付属のDVD を視聴しながら,巻末の演習問題を段階的に解かせるという方法で行った.他の市販の動画教材や,WEB 上で公開されている動画も同様に利用できる.動画に適した演習問題を作成する,または,動画をテーマにしたグループディスカッションを行うというように応用ができると考える.
これらDVD 視聴などの認知的教材を試行した学生(延べ116 名)に与えた効果について,筆者らは次のとおり報告[1]している.図4-27 のとおり,本教材を試行していない初年次学生(159 名)を対象に行った調査で「事故の可能性について常に考えるか」の問いに対してYES と答えた学生の割合は25%であった.2 年年長の本教材を試行しなかった学生62 名は約5%の増加に留まっているのに対し,試行した学生54 名は約2 倍の50%に増加し,本教材を試行したことによる効果が認められている.
このように視覚から五感に訴える効果がある教材は,学習者が元々もっている概念を利用して,その構造や認識構造を変えることによる効果が得られると考える.動画が持つアピール性は興味関心を引きやすく内発的動機づけにも有効に働く.教材の提供は,学習者が自ら情報を構造化できるように相互作用的な環境を用意することが望ましいと考える.