1960年代には、学生数の増加に伴い世界のあちこちで大学教育の変革が進んだ。それまでの大人数の座学に替わり、例えば、事例に基づいた学び方や、授業の中で実践的な体験をもたらすことをねらったプロジェクト教育のような方法が導入された。中でも、カナダのマクマスター大学で始まり名づけられたProblem-Based Learningは、後に世界的な広がりをみせることになった。
マクマスター大学医学部では、医療科学が高度な専門分野に細かく枝分かれするにつれ、従来型の講義や実習を専門ごとにバラバラに学んでいては、知識が実際の臨床に応用できないという問題が発生していた。そこで、患者を目の前にしたときに発生する現実の問題を解決する過程で、様々な異なった科目から知識を統合するという学び方が生まれた。この学び方は、知識を効率的に得ると同時に、実際の医者がたどる道筋を知ることができたのである。このような学び方により、学びの経験がより刺激的でより意義深いものとなり、結果として、受動的な講義よりも使える知識が増えるという効果が得られたのである。理論的には、認知心理学やピアジェ(Piaget, J.)の認知発達理論「知識は他者から受動的に与えられるものではなく、主体が能動的に構成するものである」とする構成主義の立場に立っている。
Problem-BLは1960年代からそのコンセプトが広がり、図2-2のように多くの異なる型をもつ学びへと変化して世界へ広がっていった。