5-2-1 グルーピング
A.ランダムにチームを結成する
効果
(1)多様な個性、多様な発達の理解と尊重
(2)どのような個性とも協力するスキルや態度の育成
(3)仲良しグループこわしと、新しい人間関係づくり
主に低学年の共同学習で用いて効果があった。個人的な感情や作為が入り込まないため、誰もが納得して共同学習に臨もうとする。しかし、長期間の活動には向いていない。何度も組み替えて、どのようなチームメイトと組んでも自分の能力を発揮できるようにする訓練として適している。また、クラス内で自然にできている仲良しグループを壊すためにも利用できる。仲良しグループは、話をしなくても分かり合えるというような心地よい関係性が出来上がっていることが多く、活発な議論や切磋琢磨するムードをつくることは容易でないため、低学年では意図する学習が成り立たないことが多い。具体的には「くじ」が一番多いが、アイスブレーキングを兼ねてゲーム的に「学籍番号計算法(学籍番号を作りたいチームの数で割るとある答えが出て余りが生じる。その余りの数をチーム番号とするやり方)」や「生まれ月」などの方法が楽しく公平感があって効果的だった。
B.意図的に協調的チームを結成する
効果
(1)自己評価力
(2)多様な個性、多様な発達の理解と尊重
(3)自分の能力を高めたり発揮したりすることに能動的に関わる(自己教育力)訓練
(4)主体性
(5)働きかけ力
デンマークの小学校や中学校では、生徒の成績や性格を考慮して、教育的配慮のもとに教師が意図的にグルーピングすることがある。卒業認定試験前の数学は特に成績の良い生徒が個人学習を望むそうだが、その後の人生において、個人で学び成果を上げることは有り得ないとして学校ではチームベースの共同学習を徹底して行う。しかし、個人にとっても効果的な学びがもたらされるようなチーム編成を教員が行うということである。高専教育においても、教科や専門によっては必要な場面があると考えられる。
学習活動の手順
高専教育でプロジェクト推進型の共同学習に効果的だと考え、良く利用した方法は、「+の力と-の力」(図5-3)と、「コミュニケーション・スタイル・インベントリー(図5-5)」を利用する2つの方法である。
B-1 「+の能力と-の能力」を使ってチームを結成する
3年生の分析化学実験を、テキストに沿って進める従来型からプロジェクト推進型に変えた際に考案した方法である。その後、様々な学年のプロジェクト推進型学習のチーム編成に用いた。
(1)まず、学生はそれまでに体験した共同学習の経験から自分の得意・不得意を客観的に分析、自覚するワークを行う。静かに振り返る時間を与えて、A4以上の大きさのワークシート(図5-3)に、サインペンを使い大きな字で書き込ませた。
(2)次に全員が見渡せるように内側を向いて輪を作り、(+)の能力を順に読み上げ、プロジェクトチームを結成するための自己アピールをした。全員がアピールし終わったら、自由に動き回り話し合ってチームを結成した。この際に与えた注意事項は図5-4の通りである。
(3)チーム結成時、なるべく自分には無い能力をもち、相互に助け合い、共に学び合えるような相手を探してチーム編成をするようにと、指示をして待つ。すると、たいていは自薦、他薦の進行役が現れ、(-)の能力も自己紹介することを提案し、順に紹介後20分程度動き回り話し合いながら、指示された数のチームを結成した。そのプロセスか学生を主体的な学習者へと促す。
(4)チーム編成時には、自分自身を自己評価してそれを自覚した上で、全チーム(クラス全員)のプロジェクトが成功するために、チーム編成で自分がどのようにふるまえばいいのかを考えるようにと、声掛けを行う。また、将来、企業で働くことをイメージできるように、卒業生の体験談やエピソードなども紹介して、プロジェクトに参加する動機づけを促した。
B-2 「コミュニケーション・スタイル・インベントリー」を使う方法
就職を間近に控えた5年生や専攻科生のプロジェクト型実験では、「+の能力と-の能力」にもう一つの自己分析を加えて行った。(株)コーチ・トゥエンティワンが開発した診断テストCSI(コミュニケーション・スタイル・インベントリー)の簡易版チェックシートである。
チェックシートに従って分析すると、個々のビジネス上のコミュニケーション・スタイルの特徴が明らかになる。チーム編成時に、自分とは異なるタイプの人を探してチームを結成する。B-1と組み合わせて使うと、学生たちは納得しながら楽しんでチームを作り、このチームでやってみようという気持ちになっていく。
C.自由にチームを結成する
効果
(1)自分の選択や意思決定過程への責任
(2)自分の価値を自ら高める努力
(3)自己評価力の強化
(4)自己教育力の強化
グルーピングをすべて学習者に任せる方法である。学習者が精神的に成熟しておりPBLによるイノベーションまでを狙う場合に有効な方法である。何らかの学習効果を意図することが多い高専教育ではあまり適していないかもしれない。デンマーク、オルボーPBLモデルではこの方法でチームを結成するという。オルボーでは、個人ではなくチームのパフォーマンスが評価され成績が決定するので、学生誰もが、どのようにふるまえばチームの中で能力が最大限に発揮でき、チーム全体のパフォーマンスが上がるかを考え努力する。そのために自分が皆から選ばれるように行動するという。しかし、小学校から高校までのPBL基礎教育では、教員が教育的意図に基づき生徒同士の組み合わせを考えることが多いという。
高専教育では、対象の学生がメタ認知力や自己評価力を有し自律的な学習者として振る舞うことができる場合に限り、自由にチームを結成することが教育効果を発揮すると考える。
5-2-2 ブレイン・ストーミング
効果
(1)自分の意見を出すことに慣れていない学生にとって、意見を出すことへの抵抗感をなくすことができる。
(2)参加の度合いが高まり、学びを深めるきっかけをつかみやすい。
(3)チームでアイディアを出すことの楽しさや効果が簡単に確認でき、チーム活動への意欲と期待が向上する。
(4)創造的で能動的な態度や思考方法を獲得できる。
(5)メンバーの考えや発想に触れることによって、チームとしての結束が固まり、一体感や仲間意識が強くなる。
(6)解決策への見通しが立てられる。
(7)自分の意見と他者の意見を尊重する態度を育成できる。
ブレイン・ストーミングとは、1938年頃、当時、アメリカの広告代理店BBDO社の副社長をしていたアレックス・F・オズボーンが考案した発想支援のアイディア発散的思考法である。アイディアの生成段階と評価段階を意識的に区別し、生成段階を支援することを目的とする。数人でチームを組み、あるテーマに対して、既成概念にとらわれず自由奔放にアイディアを出し合う会議形式の手法である。オズボーンによれば、“ブレイン(頭脳)で問題にストーム(突撃)すること”だという。
自由に何でも話し合うこと自体をブレイン・ストーミングと呼ぶ人もいるが、ただ自由に話し合うのではなく、ルールに従って進めると、驚くくらい話し合いへの抵抗が少なくなり個々の参加度が高まり、参加者の満足感も得られやすい。授業における共同学習では、学生同士で話し合わせるだけでは、常に得意な学生が仕切ってしまい、不得意な学生はいつまでたってもコツがつかめず自信もつかないということがある。授業では、苦手意識をもつ学生が少しでも挑戦できるような、自由で寛容な「場」や「雰囲気」を、指導者が用意することが必要である。また簡潔で的確な言葉選びを支援することもある。学生時代には、失敗もするが、その学生なりの小さな成功体験も得られるようにすることが大切である。ブレイン・ストーミングは、創造的活動への導入段階で多様な視点を漏れなく検討するために有用で、意見やアイディアを生み出す訓練のためのツールとして優れている。
A.ワークショップ型のブレイン・ストーミング
学習活動の手順
(1)1チームを4~5名で結成する。4~5名が最も学習効果が高い。高専教育においては、3名ではアイディアに多様性が出ず、6名だと1人当たりの関与が少なくなり、積極的に意見を出すための訓練にならない。
(2)まず、次の5つのルールを板書して説明し、従わなければならないことを告げる。
①否定しない ⇒ どんなアイディアも批判も否定も議論もしないこと。話し合わない。反対のアイディアを出すのはOK。
②質より量 ⇒ 良いアイディアを出そうと考えず、質より量を大切にして、できる限り多くのアイディアを出すこと。
③突飛なアイディア大歓迎 ⇒ 人が思いつかないような自由奔放なアイディアをどんどん出すこと。新しい視点となる。
④結合や便乗OK ⇒ 前に出たアイディア同士を結び付けてもいい、他者のアイディアと自分のものを結び付けてもいい。
⑤キーワードで表す ⇒ ひとつのアイディアを短い言葉で端的に表す。複数が混在している場合は切り分けて出す。
(3)チームに白紙とサインペンを配付して、記録係を決める。記録係は記録しながらも自分のアイディアを出す。
(4)テーマを告げる。
(5)ある程度、アイディアが出尽くしたら活動を止めて、出たアイディアの数を記録し、数が多い順に拍手で祝福する。
(6)アイディアが一番多かったチームに読み上げてもらう。
(7)アイディアが一番少なかったチームにも読み上げてもらうと良い。キラリとひかるアイディアの存在に気付かせる。
(8)何人かの学生から感想を聞いた後、ブレイン・ストーミングという方法の説明をして、学習活動を意味づけする。
(9)出たアイディアを基に、次の収束的思考の活動へとつなげる。
ブレイン・ストーミングには、様々な応用型や発展型があるが、アクティブ・ラーニングで使いやすいのは、他には次のようなものである。
B.記録係がカードに記入するブレイン・ストーミング
ブレイン・ストーミングの後で、収束技法を使ってアイディアをまとめる作業をする場合は、白紙ではなくカード(名刺大程度の付箋紙が都合が良い)に記録していく方法をとる。一枚のカードに一つのアイディアを書く。ルールはAと同じ。
C.個人がカードに記入するブレイン・ストーミング
頭に浮かんだアイディアを1人ひとりがカードに書き出す方法。それを読み上げながら机の中央に出していく。カード一枚に一つのアイディアを書き込む。共同学習の最初の頃は、思いついたアイディアを口に出すことがなかなかできない学生がいる。ルールは他のブレイン・ストーミングと同じである。皆が書き終わった頃を見計らってストップをかけ、一人ひとりがカードを読み上げてチーム内で共有する。この方法によって、誰もが公平に自分のアイディアを出し共有することができる。訓練によってアイディアを出し合うことの楽しさや効果を感じられると、チームでの話し合いにスムーズに移行できるようになる。
5-2-3 マッピング
ブレイン・ストーミングで出した膨大な数のアイディアをまとめる手法。まとめた結果から、アイディアを分類し構造化する場合、課題に対する対策を導き出す場合、さらに整理して収束させていく場合、アクションプランの作成をする場合などに効果を発揮する方法である。授業に使えるいくつかの方法を以下に紹介する。
効果
(1)データ(共同学習の場合は、チームのメンバーが出した雑多で多数のアイディアや意見)の全体を構造化し視覚化できる。
(2)データの全体像が把握でき、俯瞰的に捉えられる。
(3)合意形成や話し合いの進捗状況が確認しやすく、チーム全員で共通理解ができる。
(4)共同学習の楽しさや効果が簡単に確認でき、チーム活動への意欲と期待が向上する。
(5)創造的で能動的な態度や思考方法を獲得できる。
(6)チームとしての結束が固まり、一体感や仲間意識が強くなる。
(7)解決策への見通しが立てられる。
(8)合意形成の結果に全員の納得が得られやすい。また考え直しや修正もし易い。
(9)決定した事項に対してチームの全員で責任を共有しやすく、その後、主体的に実行に移しやすい。
A.KJ法によるマッピング
開発者の川喜田二郎氏のイニシャルから命名された方法であり、膨大な質的データに基づいて発想することを目的とした方法。次の8段階の手順により、問題提起、現状把握など、観点を変えながら何回か繰り返す場合もある。
学習活動の手順
(1)テーマを決める。
(2)情報を単位データ化する。(アイディアや意見を出し合う場合は、ブレイン・ストーミングを使う)
(3)データを1行の見出しとして圧縮し、名前を付けラベル化する。
(4)類似したラベルをグループにまとめる。
(5)それらのラベルグループに新しい名前を付ける。
(6)これをさらに上位のグループにまとめる。
(7)ラベルグループを平面上に配置する。
(8)これを叙述化する。
B.カード同士の関係性を視覚化するマッピング
KJ法の考え方を利用した自由度の高いマッピングである。すべてのカードを模造紙の上に広げて、カード同士の関係性を考えながら適切な場所に配置していく方法。
学習活動の手順
(1)関係が近いカードを近くに置き、関係が遠いカードは遠くに置く。上下や左右の配置にも関係性を反映させる。
(2)まとまったカード群に名前をつける。
(3)カード群同士の関係性も考えて、さらに配置する。
(4)カード群を集めてグループにする、逆にカード群の中で小グループに分けるなどして、適切だと思える位置に配置していく。
(5)配置が決まったら、群の名前や関係性などを有色フェルトペンなどで書き込む。
(6)チームでよく吟味して、皆が納得のいくように仕上げる。
C.4象限マトリックスを利用したマッピング
模造紙にX軸とY軸の2軸による4象限をつくり、4つの領域の適切な位置にカードを配置する方法。最終的な落としどころに合うような軸をあらかじめ決めておいてカードを配置する場合と、出てきたカードの特徴を良く表す分類ができるように後で軸を設定する場合がある。4象限マトリックスは、渾然としたグレーゾーンにあるアイディアを、軸に沿った度合いの強さという視点で整理することにより、合意形成のための決断を助ける汎用性の高いマッピング法である。
D.一次元的な流れに沿ったマッピング
因果関係を明らかにする場合や、時系列で整理する場合に、その流れが見えるようにカードを配置する方法。カード間を矢印でつないで、流れや関係がわかるようにする。うまくつながらない場合は、必要と思われるカードを適宜追加して、スムーズなつながりを作る。カードのつながりをもとに、ストーリーを作ることもできる方法である。
マッピングの留意点
授業で学習活動として学生だけでマッピングをする場合、カードの分類の際に、視点が偏ったり、重要な視点が抜け落ちたりすることが多い。学生がもつ限られた情報や知識では、抜け落ちている視点を活動中に見出すことは困難である。このような場合は、マッピングの最中に介入して新しい視点を提示することが必要である。新しい視点の提示により、学生がカードを増やしたいということを歓迎する。しかし学生が納得しない時は無理強いをしない。機が熟していないタイミングだと、せっかく主体的に関わっている活動への意欲が低下してしまい、指導者が提示する答えを待つようになってしまう恐れがある。抜け落ちている視点への気付きのチャンスは、その後の活動にもあるはずである。一連のプログラムの流れの適切なタイミングに「教えの活動」を挿入する。
アイディアを出すこと、共有することができるようなると、合意形成の訓練としての効果を発揮する。逆に手順を踏まずにグループワークを進めると、話し合いが稚拙で学習共同体としての機能を発揮しないまま、偏った成果主義に陥ることが多い。この場合、ある程度活動的であるため学生の満足度は高いが、学びが深まらない結果となる。
E.PCM手法(プロジェクト・サイクル・マネージメント)
PCM手法は、プロジェクトをサイクルで捉え、管理するための手法である。サイクルはプロジェクトの計画、実施、評価のそれぞれの段階が一連の過程の中で位置づけられ、相互に関連していることを示す。すなわち、問題の認識、対応方法の立案、現実的な行動計画、計画に基づく実施、実施に対する評価、そして、計画・実施・評価を通じた明確な経験や反省が得られ、さらに次の段階の計画に活かされる「輪」を体験できる。ドイツ技術協力公社(GTZ)の目的指向型プロジェクト立案(ZOPP)手法を基に開発された手法であり、問題解決型で、参加型、一貫性、論理性図5-7 自由度の高いマッピングの例 という特色を有し、他の手法と相互補完的であることなどから、専攻科のPBL「地域に役立つものづくり」に導入した。
社会実装を目的とした技術を創造する際に、対象を取り巻く文化的・社会的状況文脈の中に技術を位置づけ、当事者として責任をもって関わる体験ができるため、特に高学年への導入が適している手法である。社会人対象の課題解決力育成講座では好評であるが、社会人経験のない学生によっては負担感が大きく感じられる方法であるため、基礎力の育成をふまえ、手法の意義を十分に理解させてから導入することが望ましい。
PCM手法の特色の一つである論理性は、特に高専における技術者教育に効果的であると言える。現状の問題点を、「原因-結果」の因果関係から明確に分析し、問題を解決するための手段を「手段-目的」の関係から導きだす。特に、論理的思考や批判的思考の訓練に適している。
PCM指導上の留意点
この手法は、技術やシステム移転などの際に、支援する側と受ける側との協力関係をつくりだして、より効果的で持続的な社会開発に寄与することを目的として開発された手法である。そのため、高専教育における社会実装型PBLにおいて、技術者の総合的能力を育成することが目的の、より社会的文脈を重視する技術開発の授業で有効な手法である。
本来は、解決すべき問題に関わる全てのステークホルダー間で議論することが求められるが、授業では難しい。そこで、指導者は、抜け落ちがちなステークホルダーの視点の存在に常に注意を払い、学生に気づかせることが必要となる。指導者自身がその役割を演じること、調査の範囲を広げその方向性を提示すること、また可能であれば、学生自身が教室を出て社会に出かけて観察やインタビューをできるように学習環境を整えることが望ましい。
学生が最初にぶつかる困難は、問題分析の問題抽出時に、問題を「困っている現象」として捉え言葉で表現することである。問題として事実のみを挙げるにとどまると、次の目的分析に到達せず浅い掘り起こしで終わってしまう。次に、ぶつかる困難は、「原因-結果」「目的-手段」などの論理的思考である。指導者は、論理的に矛盾がある箇所を指摘して再考を促すことが必要になってくる。時には一緒に考えながら指導者がモデリングすることが効果的である。検証のタイミングとその程度の判断も、学生には難しい場合が多い。この活動にかけられる時間など、様々な制約のもとで行わなければならない。活動中にステークホルダーを招いた中間的評価会を複数回開催するなど、教育プログラムのデザインや評価方法に工夫が必要である。
PCM手法は非常に効果的な手法である一方、このように、指導者側のスキルが求められ負荷も大きいので、コーチング、モデリング、ファシリテートの役割、教育プログラムデザインと柔軟な変更、学習環境の整備などに、指導チームを結成して取り組むことが効果的である。(NPO法人 PCM Tokyo のHPよりPCMハンドブックのダウンロード可)
5-2-4 ランキング
効果
(1)テーマに対する多様な考え方を比較検討しながら、自分の考えをまとめることができる。
(2)チーム内で意見交換することで、判断の多様性に気づき、理解が深まる。
(3)選択肢の書かれたカードを指導者側があらかじめ用意して、基礎知識を体験的に習得する手段としても利用できる。
(4)自分の意見と他者の意見を尊重する態度を育成できる。
(5)新たな観点を見出しながら判断基準を検討、変化していくことにより、より高度な合意形成のプロセスを体験できる。
ランキング(順位づけ)は、テーマに基づく複数の事柄の優先順位を考えることで、個人やチームの考えを整理したり、深めたりするための手法である。多様な判断を検討する過程で、そのテーマに対する理解をより深めるものとなる。
20分~40分程度でも可能で、自由で寛容な雰囲気をつくりチーム全体が納得できるように促すことによって、合意形成のための話し合いの訓練となる。また、個人 → チーム → クラス全体 → 個人という具合に、何度か繰り返すことで、多様な新しい視点の存在に気づき判断基準がより納得できるものに変化していく、高度な合意形成のプロセスを体験できる。
授業では、カードブレイン・ストーミングの後、次の2つによってランキングをする方法が導入しやすい。
A.カード回しによる絞り込み
意見をうまく言えない学生がいる時や、チームでの話し合いをする前に個人の考えを明確にしたい時に適した方法である。結果には必ず自分の意見が反映されるため、この後のダイヤモンド・ランキングの際の話し合いには、当事者意識が芽生え、話し合いに参加しやすくなる。
学習活動の手順
(1)カードゲームをするときのように輪になって座る。
(2)カードゲームでババ抜きをするように、ブレーン・ストーミングで作成した全てのカードをランダムに同数ずつ配付する。
(3)手元のカードの中から一番共感できるカードを2枚手元に残して、他のカードは右横の人に送る。
(4)何度も繰り返し、以前検討したカードばかりが回ってくるようになったらやめる。
(5)手元に2枚ずつ残ったカードを出し合って、ダイヤモンド・ランキングで優先順位をつける。
B.ダイヤモンド・ランキングによる優先順位づけ学習活動の手順
(1)選択肢カードを9枚前後用意する。
(この学習活動をする目的に応じて、項目とその説明が書いてあるような選択肢カードを最初から用意しておく場合と、学習者によってブレイン・ストーミングしたアイディアをカード回しなどである程度絞り込んでおき使用する場合がある。)
(2)ランキングの方法と選択肢カードの内容など、活動を円滑に進めるために必要な事を説明する。
(3)まず、各自で、ダイヤモンド・ランキングをする。(選択肢カードは人数分のセットがあるとよい、その場で学生に作らせる。)
(4)各自の順位づけの結果とその根拠を、チーム全体で共有する。
(5)チームとしてどのようにランキングするかを話し合いながら観点を整理し直す。
(6)順位づけする。
(7)各チームの順位づけの結果と根拠について発表し、全体で共有する。
図5-12において、ダイヤモンド型に並べたカードの中で一番上の1枚が最も重要だとするカードである。その下には次に重要なカード2枚が、同様に3枚、2枚と下に続き、一番下の1枚は最も重要でないと合意したカードを配置する。