4-1-1 1年生のための調べ学習を中心とした合意形成と情報マネジメントの訓練
◆授業の概要
科目名 技術者倫理入門(必修科目)
テーマ 技術者の視点からの30年後のエネルギー政策への提言
受講学生 機械システム、電気制御システム、物質化学、電子情報の4工学科 1年生 約160名受講
担当者 教員3名、技術職員2名
(研究協力者:丁子哲治、定村誠、畔田博文、高松さおり、小澤妙子)
時間数 90分/週×15回
◆この授業のキーワード
PBL/社会提案型/発表/情報リテラシー/合意形成/ 議論/チームによる共同学習
◆授業づくりの概要
著者らが教育技術センターの委員として、4工学科(機械システム、電気制御システム、物質化学、電子情報)一斉の授業として組み立てた(図4−2)。高専への導入教育として、①学ぶ意味づけ(技術者とは/科学技術を志す者としての視点の育成)、②学ぶための基礎力(聴き取る、読み取る、話し合う、表現するためのリテラシー/科学的思考/論理的思考/批判的思考)、③学ぶための心構え(基本的なルール/技術者倫理/安全教育)を組み込んだ。特に、どのような専門分野に対してもPBL基礎力を育成する授業となるように、1年生レベルのPBL基礎力として重要な、情報マネジメント力、合意形成力、自己評価力の訓練を充実させた。また、担当者が変わっても継続できるように考慮して組み立てた。(5-1-1、5-1-2、5-2、5-3、5-5-1を参照)
4-1-2 2-3年生のための、探求型実験による、チームで協働してプロジェクトを推進する訓練
◆授業の概要
科目名 機能材料基礎(選択科目)、分析化学(必修)
受講学生 機械工学科、電気工学科、物質工学科、3年生混成クラス30名、環境材料工学科3年生 20名×2が受講
担当者 教員1名、技術職員1名
(研究協力者:袋布昌幹、山腰等、川越みゆき) 時間数
90分/週×15回(機能材料基礎)
180分/週×10回(分析化学)
◆この授業のキーワード
PBL/情報の収集、選択、共有、活用、発信/合意形成/課題探求/工学的なデータ処理や考察/発表/環境安全
◆授業づくりの概要
分析化学は、テキストに従って進めていた専門の基礎的な実験を、課題探究型実験に変えた(図4-3)。前半は、基礎知識や実験スキルを学ぶためにテキストにそった実験をし、後半は、前半の応用となるような課題(シナリオ型)に取り組み発表やコンペなどを行った。チームビルディングから始め、チームによる安全指針の作成ワークなどで共同学習を体験。与えられたタスクをチームで協働して遂行する過程で、技術者としての様々なPBL基礎力を育成した。具体的には実験によるデータを解析することと、調べ学習による理論的考察、結果を発表し議論するという活動に取り組んだ。(5-1-1、5-2-1-B-1、5-2-3、5-3、5-4、5-5参照)
機能材料基礎は、3年生の3工学科混成クラスであるため、テーマは、前期は「スターリングエンジンで動くモノの作製による熱力学」、後期は「分光器の製作による光学(表4-1)」とした。具体的には、どちらもシナリオ型PBLとし、授業を進めた。
表4-1 後期「分光器の制作による光学」の授業の進め方
学習活動 | 活動の内容 | 学習成果物 | 評価基準 | |
---|---|---|---|---|
後期1週 | ガイダンス | テーマと授業の進め方/課題(シナリオ)の提示/昨年度の作品の観察/分析 | チャート図 | タスクを明確/包括的/論理的に捉えているか/目標の方向性 |
2 | 実験 | 基礎理論(回折格子を使った光の回折と干渉)の確認実験 | 実験レポート | 実験スキル、データ整理/論理性/安全 |
3-5 | 昨年度の作品を改良 | 問題 ⇒ 課題抽出 ⇒ 優先順位づけ ⇒ 調査と実験と議論 ⇒ 課題解決 ⇒ 課題抽出 ⇒ 繰り返し | 技術課題のマトリックス/学習進捗用紙 | 課題抽出は的確か/根拠/方法/調査/目標設定 |
6-7 | 改良品の報告会① 改良品の報告会② |
①最初の2班のみ報告発表、質問、コメントの練習 ②すべての班の報告 |
発表用紙/改良品 | 論理性/定量的/的確な受け答え/コンセプトドリヴン/対象を考慮した報告 |
8-13 | 新たな「教材・テキスト」作り | 新たな問題の発見と提示 | ワークシート | タスクを明確/包括的/論理的に捉えているか/目標の方向性/限界/確かさ |
製作と改良 | 問題 ⇒ 課題抽出 ⇒ 優先順位づけ ⇒ 調査と実験と議論 ⇒ 課題解決 ⇒課題抽出 ⇒ 繰り返し | 種々ワークシート | 課題抽出は的確か/根拠/方法/調査/目標設定 | |
14 | 教材の発表とコンペ | 自分たちの評価基準作り/評価シート | 製品/PRシート/使用マニュアル/評価用シート | 態度/誠意/質問への受け答え |
15 | 振り返り | 相互評価/自己評価/授業で学んだことを記述 | ワークシート/効果測定 | メタ認知/認知の認知/学習活動や手法の適正さの検証 |
4-1-3 5年生のための、現実的な問題解決に専門知識を応用して最後まで考え抜く訓練
◆授業の概要
科目名 環境材料工学実験(必修科目)
受講学生 環境材料工学科20名受講
担当者 教員1-2名、技術職員1名
(研究協力者:丁子哲治、高松さおり) 時間数 180分/週×10回
◆この授業のキーワード
PBL/地域社会への提案型/CO-OP/工学的なデータ処理や考察/発表/地域の方とのコミュニケーション
◆教授・学習のスタイル
街の活性化を目指して、温泉街の人々に廃熱利用の技術とアイディアを提案するプロジェクト型の実験として組み立てた(図4-4)。熱エネルギー輸送の理論を応用したものづくり(オリジナル装置の作製)として、ペルチェモジュールなどを用いて、温泉街の廃熱や自然エネルギー等からの電気エネルギー回収の高効率化を競った.プロジェクトを遂行する過程で、論理的思考力、創造的な思考力、知的財産の創造、活用、保護などナレッジマネージメントの基礎、議論により考えを深め、知識を共有しながら新しい価値を生み出していく、科学的根拠に基づいたプレゼンなどを体験しながら学ぶことをめざした。(5-2-1-B,5-2-2、5-2-3、5−3、5−4、5−5参照)