1-1 高専教育への期待の変化

図3 地球は人跡未踏の時代へ

図1-1 現代社会の特徴

 技術系卒業生の多くが就職する製造業の産業構造は、90年代以降大きく変わった。大量生産型の産業システムから、付加価値の高い無形資産の創造にも適応したシステムへの変容を求められる時代が到来している。さらに、世界では今日の持続可能ではない社会のあり方を転換する必要性も叫ばれている。このような時代背景の中、革新的技術開発(イノベーション)や戦略的知的創造サイクルの推進が重要となってきており、それらの多くは若い技術者に負うところが大きい。

 このような時代の変化に伴って、高専教育への期待も変わってきた。高専制度が創設された60年代に育成目標としていた「中堅技術者」という表現は当てはまらなくなり、企画から顧客対応までの各段階において多様な技術者が必要となってきた。高専教育は、主体的に課題を設定し解決する資質を備えた実践的な人材を養成する使命を負うようになった。そのため、教育方法の転換や質の向上が急がれるようになり、地域との有機的連携による協働教育などの重要性が高まってきた。

 平成15年に定められた独立行政法人国立高等専門学校機構法(以下、高専機構法)の目的には、「創造的な人材の育成」が新たに明記された。これを受け高専教育の特長である実技教育(以下、実験・実習・演習等を総称して実技とする)の充実をめざして創造性実験などの実践事例が多くなってきている。